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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

おじいさんと蜂

チワワペット

 

 私が小学生だった今から60年以上前の出来事である。
 実家の隣の家は、農家で息子さんが米を作って、その息子さんのお父さん(おじいさん)は養蜂を行っていた。
 日頃から、おじいさんは、大きなビンに入った蜂蜜を「はちみつ取れたばかりだから、食べて」と、嬉しそうな顔をして、わざわざ、家に、持ってきてくれるのである。  
 おじいさんの蜂蜜をスプーンですくって食べるのが楽しみであり、美味しいので兄や弟と競って食べるので、あっという間にビンの中の蜂蜜は底をついた。
 おじいさんは、毎日、網の袋をかぶって、蜂の巣箱が幾つも置いてある畑で朝から日が暮れる迄、仕事をしていた。私はその姿を見て「おじいさんは、蜂の事が大好きだし、自分の子供のように大事にし世話をしてすごいなあ。」と思っていた。
 ある日の事である。以前から巣箱の近くでは遊ばない様にと、大人達に言われていたのに、この日は、友達と追いかけっこをしていて夢中になり、過って私は1つの巣箱に体をぶつけてしまったのである。驚いた蜂達が、一斉に巣箱から飛び出し、私に向かってきたのである。
 「ブーンブーン」と頭髪の中に入っている何匹かの蜂の気配を感じた。私は、恐怖のあまり大声で泣き出した。私の泣き声に気付き、近くにいたおじいさんが、すぐ駆けつけてくれて、頭髪の蜂を素早く取ってくれたので、蜂に刺されずに済んだが、「もう、取れたから大丈夫だよ。」と言うおじいさんの顔が、どことなく悲しそうであった。ふと、足元を見ると、数匹の蜂の死骸があった。
 「私の不注意でおじいさんの大事な蜂を死なせてしまった。」と気付き、おじいさんに謝らなくてはと思った時は、かなり月日が経ってからであったので、その頃には、おじいさんは、もう亡くなっていた為、結局、謝罪できなかった。
 現在、巣箱が置いてあった畑は、道路になって当時の面影はなくなってしまったが、近くを通る度に懐かしさと同時に、おじいさんの悲しそうな顔が思い出される。

 

(完)

 

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